原因抽出方法:原因体系化モデル【RISCAD Story 第8回 】by和田有司

さんぽコラム RISCAD story 第8回/全10回
原因抽出方法:原因体系化モデル
-リレーショナル化学災害データベースと事故分析手法PFA-
和田 有司

投稿日:2018年5月17日 10時00分

 事故分析手法PFA®、すなわち、事故進展フロー図を用いて事故事例を分析する方法をセミナーなどで外部の方に紹介していく過程でいくつかの問題が明らかになった。
 一つは、事故に関連する事象と事故の原因との切り分けの困難さであった。例えば、間違ってバルブを開けた、というのは、内容物が漏洩した原因と捉えることができるが、一方で、バルブが開いた、というのは、事故に関連する事象にすぎず、バルブが開いた原因が他にあるはずだ、と考えることができる。そこで、事故分析手法PFAにおいては、作業者および組織の行動、状況や設備、装置、化学物質および手順書の状態などの全てについて、実際に起きたことが明らかか、かなりの確度をもって推定できることを事象と定義した。このような定義は、事故進展フロー図作成の簡便化にも有効で、分析者はとにかく何か事象が記載されてあれば、1本の時系列のフローに並べることだけを考えればよい。上の例では、内容物が漏洩したのであるから、バルブが開いたことは間違いないので、バルブが開いた、というのは事象であると言える。
 もう一つは、原因の抽出方法がわからない、あるいは、原因の考え方が分析者によって異なるという問題であった。ある者は、作業者の責任を重視し、ある者は、管理者の責任を重視する、といった原因の視点の相違である。

 原因の抽出方法については、図1に示す「原因体系化モデル(SOCHEモデル)」を用いて考える方法を開発した 1)。原因体系化モデルはHawkinsによるSHELLモデルをベースとして開発された教訓の体系化モデル 2)に「化学物質」という要素を追加したものである。すなわち、事故に直接関係した「組織」、「人」、「装置・設備」、「化学物質」に加え、当事者ではない「組織」、「人」とこれらを取り巻く「社会」を要素として考え、ある事象にこれらのどの要素が関係するかを明確にし、それらの要素間に問題が無かったかを検討する方法である。この原因抽出方法により、分析者の経験の相違による原因の相違や見落としを減らすことができる。図2に原因体系化モデルによって抽出された原因の例を示す。

図1 原因体系化モデル(SOCHEモデル)

図2 原因体系化モデルによる原因抽出例

1) Katoh, K., Abe, S., Nishimiya, K., Higashi, E., Nakano, K., Uchimura, S., Owa Heisig, K., Ogata, Y., Wakakura, M., & Wada, Y., : Classification of Causes of Chemical Accidents by Means of Progress Flow Analysis (PFA), Proc. 13th Loss Prevention and Safety Promotion in the Process Industries, pp.89-95, Belgium (2010)
2) (独)原子力安全基盤機構:巨大システム事故・トラブル教訓集(2009)

和田 有司 / Yuji WADA,Ph.D

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境安全本部 安全管理部 次長 (兼)安全科学研究部門付

1件でも事故を減らし、1人でも被害者を減らしたい、という一心で事故DBに携わって25年になります。趣味は事故情報の収集です。