二酸化炭素中毒とは?【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2021年02月04日 10時00分

2020年12月、2021年1月と、立続けに建物の地下駐車場の二酸化炭素消火設備に関する事故が起きました。現在のところ、原因は装置の誤作動または誤操作といわれています。いずれの事故でも死者が出ましたが、死因は二酸化炭素中毒または窒息との情報があります。二酸化炭素での中毒というのは、先月のこのコーナーで取り上げた一酸化炭素中毒ほど頻繁に耳にしないかと思います。今回は、二酸化炭素中毒についてClose UPです。

立続けに起きた二酸化炭素消火設備に関する事故

年末、年始と二酸化炭素消火設備に関する事故が立続けに起きました。事故概要は以下の通りです。

2020/12/22 愛知・ホテルの地下駐車場で消火設備の誤作動により二酸化炭素中毒
ホテルのタワー式立体駐車場の地下で二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出されて二酸化炭素中毒が起きた。同駐車場内で作業中であった作業員1名がガスを吸込んで死亡し、別の作業員や同ホテルの従業員計10名がガスを吸込んで病院に搬送され、1名が重症、9名が中等症や軽症となった。警察と消防の調べでは、同駐車場は車両を昇降機に乗せて昇降させるタワー式立体駐車場で、死亡した作業員1名は、2機ある昇降機のうち1機のチェーン交換などの改修作業中であった。同設備の誤作動か、作業で火気を使用する工程があり、同駐車場に設置されていた二酸化炭素消火設備の誤作動を防ぐため、別の作業員が設備を一時停止しようとしたが、誤って作動ボタンを押し、消火設備から二酸化炭素が放出された可能性がある。

2021/01/22 東京・地下駐車場で消火設備点検中に二酸化炭素中毒
高層ビルの地下1階の駐車場で二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出されて二酸化炭素中毒が起きた。同駐車場内で同消火設備の点検作業中の作業員6名のうち、3名が現場に取り残された。消防が救助して病院に搬送したが、うち2名が死亡し、1名が一時重体となった。警察と消防の調べでは、同消火設備の点検作業中に、消火設備の誤作動または誤操作により二酸化炭素が放出され、周囲に充満した可能性がある。

二酸化炭素消火設備の消火の仕組み

二酸化炭素消火設備とは、どのような仕組みで消火をする設備なのでしょうか。総務省消防庁の通達「全域放出方式の二酸化炭素消火設備の安全対策ガイドラインについて(通知)」*を参考に見ていきます。

二酸化炭素消火設備は、消火に伴う汚損が少なく、また、電気絶縁性があるなどの特徴があるため、通信機器室、電気室、ボイラー室、駐車場などの火災を有効に消火することのできる設備として設置されているとのこと。今回の事故も、二酸化炭素消火設備を設置する、ホテルの地下駐車場、高層ビルの地下駐車場で起きました。

二酸化炭素の消火作用としては、以下のことがあげられます。

  • 燃料と空気の混合によって形成される可燃性混合気中の燃料及び酸素濃度を低下させ、燃焼反応を不活発にすることで消火する
  • 二酸化炭素の熱容量で火炎から熱を奪い、温度を低下させて燃焼反応を不活発にすることで消火する
また、二酸化炭素消火設備は、二酸化炭素が液化ガスとして容器内に貯蔵されているため、以下の効用もあるとのことです。

  • 容器内に液化ガスとして貯蔵されている二酸化炭素が放出される際、二酸化炭素が気化することにより発生する蒸発熱も火炎の冷却を助けることから、消火剤としてより効果的に作用する

二酸化炭素中毒とは?

二酸化炭素は空気中にも存在する化学的にも安定した物質で、その毒性は弱いです。しかし、空気中に存在する物質だからといって、大量に吸引しても大丈夫というわけではありません。

同ガイドライン*には、二酸化炭素を吸入した場合の身体症状について、以下のように記載されています。

  • 気中濃度3-6%:数分から数十分の吸入で、過呼吸、頭痛、めまい、悪心、知覚の低下
  • 気中濃度10%以上:数分以内に意識喪失し、放置すれば急速に呼吸停止を経て死に至る
  • 気中濃度30%以上:ほとんど8-12呼吸で意識を喪失する
空気の組成は、窒素が約78%、酸素が約21%、そして残り1%が二酸化炭素やアルゴンです。この空気中の二酸化炭素の濃度と比較すれば、中毒に至るほどの二酸化炭素の濃度がどれだけ高いかわかります。

二酸化炭素消火設備から放出される二酸化炭素の濃度

二酸化炭素消火設備から放出される二酸化炭素は、消火という目的を持って放出されるため、前述の吸入した場合の身体症状にあげた数値よりも二酸化炭素濃度が濃い部分が存在すると考えられます。

とすれば、「気中濃度30%以上:ほとんど8-12呼吸で意識を喪失する」に該当する濃度です。今回のような二酸化炭素消火設備の誤作動などの事故が起き、放出された二酸化炭素を吸入すれば、避難する間も無く意識喪失し、救助が間に合わなければ、呼吸停止して死亡してしまう可能性があります。

また、55%以上の高濃度の二酸化炭素が存在すると、二酸化炭素中毒と酸素欠乏症とがあいまって、短時間で生命が危険になるとのことで、この場合は窒息死する可能性があります。

まとめ

日常生活では、中毒を起こすほどの濃度の二酸化炭素に接することはないかもしれませんが、例えば身近なところにあるものの例として、ドライアイスは固体の二酸化炭素です。過去には以下の事例のような事故も起きていますので、知識としては知っておきたいことです。

2020/02/28 ロシアのサウナ施設のプールでドライアイスによる酸欠、中毒
ロシア・モスクワのサウナ施設で誕生パーティの演出のため室内プールに約30kgのドライアイスが投入され酸欠や中毒が起きた。パーティの客ら18名のうち、2名が現場で死亡し、1名が搬送先の病院で死亡した。4名が凍傷や二酸化炭素中毒となった。当局の調べでは、ドライアイスが投入されたプールから大量の二酸化炭素が発生し、そこに飛び込んだ客らが酸欠となり意識を失いプール内で溺死したり、二酸化炭素中毒や凍傷が起きた可能性がある。

2020/7/7 兵庫・車でドライアイス運搬中に二酸化炭素中毒
車でドライアイス運搬中に二酸化炭素中毒が起きた。通行人が、路肩に停車中の軽乗用車内でぐったりとした様子の配達員2名を発見し、警察に通報した。2名は意識不明で病院に搬送されたが、その後意識が回復した。警察と消防の調べでは、2名は製氷会社の配達員で、ドライアイスを運搬中であった。車内には紙に包まれたブロック状のドライアイス30-40個、計約300kgが積載されていたが、車の窓は閉められており、車内に二酸化炭素が充満して二酸化炭素中毒が起き、また、車内が過剰に冷却されて低体温症が起きた可能性がある。

【参考資料】

総務省消防庁
  *「全域放出方式の二酸化炭素消火設備の安全対策ガイドラインについて(通知)」

【参考記事】

労働災害と酸素欠乏症【Dating Chemistry 人と化学のランデヴー】by 若倉正英

さんぽニュース編集員 伊藤貴子