RISCAD Update 2018年6月第1週【週刊化学災害ニュース】

2018/06/01 12:00 - 2018/06/06 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2018年06月13日 10時00分

*2018/06/01発生の、大阪・中学校で理科の実験中に硫化水素で体調不良
:実験に参加していた中学2年生の生徒約30名中、2名が体調不良で軽症
https://riscad.aist-riss.jp/acc/9250

*2018/06/01発生の、石川・イベントで河川に流した灯籠が燃える
:使用していたろうそくが倒れて灯籠に着火し、他の灯籠にも延焼。約1,200の灯籠のうち半分が焼けた
https://riscad.aist-riss.jp/acc/9251

*2018/06/03発生の、長野・ガソリンスタンドの地下タンクから河川にガソリンが流出
:先月末からガソリンの販売量と地下タンクの残量が合わず、業者に設備検査を依頼していた
https://riscad.aist-riss.jp/acc/9252

*2018/06/05発生の、愛知・大学の実験室でバーナ使用時に火災
:バーナを使用しようとして、何かの原因で爆発的に燃焼した可能性
https://riscad.aist-riss.jp/acc/9253

*2018/06/06発生の、石川・製紙工場で古紙溶解タンクの検査中に硫化水素中毒
:古紙溶解タンクの溶剤濃度調整中の事故。社員3名が死亡
https://riscad.aist-riss.jp/acc/9254

上記6/6に発生した、製紙工場での古紙溶解タンクの検査中の硫化水素中毒により社員3名が死亡した事故 ですが、会社はそもそもタンク内に入る必要性はないとの認識で、安全対策マニュアルにタンクに入ることを想定した記載はありませんでしたが、かといってタンクに入ることを禁止していたかということもなかったようです。そして、最大の問題は、会社が同作業で硫化水素が発生する可能性を認識していなかったとのことです。

急性硫化水素中毒で死亡したとみられる社員のうち1名は、タンク内に入り、同タンクを詰まらせた粘土状に溶けた古紙を取り除こうとして倒れ、他の2名は倒れた1名を助けようとタンクに入り次々と倒れたとのこと。3名のうちどの社員が最初に倒れたかは不明ですが、うち1名は勤続17年のオペレーターだったそうです。経験の長いその社員が行動したか、あるいは止めなかったということは、会社側が提示する安全管理マニュアルに記載がなかったため、同タンク内での硫化水素発生の危険性等を全く知らなかったという可能性もあります。

原因体系化モデル(SOCHEモデル)(*図)を用いて今回の事故の原因を抽出してみました。

組織人間:手順書不備、安全教育不足
組織化学物質:リスク評価不足
組織装置設備:設備設計不備(容易にタンク内に入れるはしごがあったこと)
        設備対応不足(匂いの情報(可能性)に対して、設備対応しなかったこと)
人間化学物質:安全意識不足(匂いがしていたであろうこと)
人間装置設備:安全意識不足(閉空間に安易に入ったこと)
人間組織:コミュニケーション不足(現場の危険情報が組織に伝わっていない可能性)

組織】が同作業での硫化水素発生の可能性を認識しておらず、【化学物質】への「リスク評価」ができないため、「手順書」で同作業で設備に近づく際の危険を予測した記載はなく、その内容は「安全教育」にも組み込まれず、当然作業者である【人間】に対してもその危険性は伝わりません。また、【組織】が硫化水素発生の可能性を認識をしていないことが【装置設備】に対する「(設備)設計」、「(設備)対応」の不備につながります。

それにより【人間】から【化学物質】、【装置設備】への「安全意識」も芽生えませんし、「手順書」に書かれておらず、【人間】が該当する設備に入ることができるようになっていれば、硫化水素臭を感じていたとしても、積極的に【組織】に危険情報を伝えようと「コミュニケーション」を取らない可能性もあります。

亡くなられた3名の方のご冥福をお祈りいたします。

           

             *図:原因体系化モデル(SOCHEモデル)

【参考記事】
「さんぽのひろば」さんぽコラム:産業を識る、保安を語る
RISCAD Story 産業保安と事故事例データベースの活用:和田有司コラムより
 原因抽出方法:原因体系化モデル【RISCAD Story 第8回】by和田有司

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子