RISCAD Update 2020年10月第1週【週刊化学災害ニュース】

2020/10/01 12:00– 2020/10/09 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2020年10月14日 11時30分



*2020/10/01発生の、兵庫・化学繊維工場で二硫化炭素タンク解体中に爆発

:電動のこぎりを使用して二硫化炭素タンクの解体作業中での爆発事故。配管部分の切断の際に、タンク内に残留していた二硫化炭素に電動のこぎりの火花で着火した可能性。解体作業をしていた従業員1名が死亡。工場では二硫化炭素をレーヨン製造の原料として使用していたが、同タンクは約10年使用されておらず、内部に二硫化炭素が残留していない前提で解体作業が行われていた

*2020/10/01発生の、京都・リサーチパーク内施設で実験中に銅粉が粉塵爆発

:銅粉末を扱う実験中に粉塵爆発が起き、破損したガラス製実験器具の破片が近くにあったヒドラジンに接触して煙が発生した可能性。単独で実験を行っていた社員1名がガラス製実験器具の破片で顔や首に切創で軽傷

*2020/10/02発生の、岡山・中学校で硫化水素発生実験中に体調不良

:試験管内で硫化鉄に塩酸を加えて硫化水素を発生させ、臭いを嗅いで確かめる実験中の事故。一部の生徒の悪ふざけにより試験管内の薬品がこぼれ、周囲で臭気を吸込んだ7名が実験後に頭痛やむかつきなどの体調不良となった。また、正しい臭いの嗅ぎ方の指示が伝わらなかった別の生徒2名が試験管に鼻を近づけて臭いを嗅ぎ体調不良となった。保健室で学校医の診察を受けたが、9名とも軽傷

*2020/10/05発生の、愛知・自動車部品工場地下の燃料タンク周辺で火災

:鋳造を行う工場での火災。工場地下1階にあった燃料タンク周辺が燃えた。出火時は機械の点検のため工場は稼働していなかった

*2020/10/07発生の、ロシア・山火事が弾薬庫に延焼して爆発

:強風に煽られた山火事の火が弾薬など約75,000tを保管する武器弾薬庫延焼して爆発。20名以上が負傷し。近隣住民ら約2,300名が避難

*2020/10/07発生の、茨城・原子力関連研究施設の消火栓ポンプ室で補修作業中に爆発

:消火栓の定期点検で見つかった水槽の穴の修理時に、錆の脱脂のため有機溶剤を含有する脱脂洗浄剤を噴霧し、ヒートガンで熱風を送り乾燥する作業中の爆発事故。揮発して滞留していた有機溶剤にヒートガンの熱風で着火した可能性。同研究施設では、有機溶剤使用後の室内でのヒートガンの使用は、作業手順として認められていなかった


上記10/7発生の原子力関連研究施設の消火栓ポンプ室での補修作業中の爆発事故ですが、組織発表の資料によると、修理箇所に有機溶剤を含有するパーツクリーナ液(脱脂洗浄剤)を噴霧して錆を脱脂させた後、ヒートガンで熱風を送り乾燥していた際に起きたとのことです。

この「ヒートガン」という器具がどのようなものなのか、知識がなかったのでネットで調べてみました。

ヒートガンは私たちが頭髪を乾かすのに使用するヘアドライヤと似た形状で、持ち手のボタンを押すと、先端のノズルから熱風が出るという仕組みのものとのことで、使用方法もほぼヘアドライヤと同じようです。

では、ヘアドライヤと何が違うかというと、ノズルから出る熱風の温度です。熱風が使用用途にかなう温度まで上がるよう固定されているもの、使用用途によって温度が変えられるものがあり、他にも風量調節機能、冷却機能といった付加機能が付いているものなど種類は様々あるようです。

そしてこのヒートガン、工業用途のみならず、DIY(Do It Yourselfの略語、本来の意味とは少し違いますが、ここで対象にしたいのは日曜大工のようなもの)で使用することもあるそうです。そしてDIYでの用途として「塗装後の乾燥作業」と書かれているサイトがいくつかありました。

「ヒートガンを塗装後の乾燥に使用する」、気になる記述です。

塗装には間違いなく塗料を使用すると思いますが、塗料には水性塗料と油性塗料があります。水性塗料は溶剤に水が使用されており、油性塗料は溶剤にシンナーなどの有機溶剤が使用されています。かつては油性塗料が主流でしたが、現在では水性塗料の性能が上がっており、油性塗料の有機溶剤を吸引するということもないことから、水性塗料が多く用いられるようになっているそうです。

塗布した水性塗料が乾くのには、溶剤である水が蒸発する必要があります。ヒートガンのDIYの用途である「塗装後の乾燥作業」は、主にこの水性塗料の乾燥を指していると考えられます。

しかし、塗布したのが油性塗料であった場合はどうでしょうか。油性塗料はシンナーなどの揮発性の高い有機溶剤を溶剤としているので、水性塗料よりも乾くまでの時間は短いです。しかし、ここでヒートガンを使用してより早く乾かそうとした場合には以下の危険性が想定されます。

万が一塗装面周辺に気化した有機溶剤が滞留していた場合、そこで高温のヒートガンを使用すれば、気化した有機溶剤に着火する可能性があります。これはまさに上記10/7の茨城での爆発事故と同じ事象です。また、塗料がスプレー式だった場合は、塗料から引火性の溶剤が気化したり、噴霧剤に可燃性ガスが使用されている場合がありますから、噴霧後すぐに高温のヒートガンを使用すれば、可燃性ガスに着火する可能性もあります。

ある製品の取扱説明書には、ガソリンやシンナーなどの揮発性引火物や可燃物の近くでは使用しないよう記載されていますが、塗装後の乾燥時に揮発性引火物である有機溶剤が揮発して滞留している可能性を考えずに使用してしまうことがないよう、気をつけましょう。

ということで、長くなりましたが、塗装乾燥にヒートガンを使用される方は、やけどへの注意のみならず、塗料の性質も理解した上でご使用ください。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子