RISCAD Update 2020年10月第3週【週刊化学災害ニュース】

2020/10/16 12:00– 2020/10/23 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2020年10月28日 11時00分



*2020/10/16発生の、兵庫・小学校で図工の授業中に体調不良

:チョークなどで児童が描いた絵に、臨時講師がスプレー式の定着液を噴霧中に起きた児童の体調不良。8名が病院に搬送されたが軽症。噴霧作業は廊下で行われていたが、換気不足のため、スプレー式定着液に含有される有機溶剤などが教室内に流入し、児童が吸い込んだ可能性

*2020/10/16発生の、岐阜・航空部品工場で火災

:工場内の航空部品の製造ラインでの火災。工場の壁や排気ガス浄化装置が焼けた

*2020/10/20発生の、宮崎・半導体部品工場で火災

:複数名の消防隊員が皮膚に刺激を感じて消火活動が一時中断されたことや、IC製造に使用する可燃性物質に延焼したことで、消火活動が難航し、鎮火までに3日半以上を要した。ケーブルの被覆などの塩化ビニルが燃焼して発生した塩化水素が原因で異臭が発生し、周辺住民が頭痛などで体調不良となった

*2020/10/20発生の、茨城・下水道内の汚泥除去作業中に中毒

:深さ約7mのマンホール内の汚泥除去作業中に起きた中毒事故。作業員1名がマンホール内での作業後、はしごを登ろうとしてマンホールの底に落下し、それを救助するためにマンホール内に入った別の作業員1名も落下した。2名は病院に搬送されたが死亡が確認された。マンホール内から硫化水素と一酸化炭素が検出された

*2020/10/21発生の、徳島・ごみ収集車の荷台で廃棄物の火災

:ごみ収集車の荷台内の廃棄物に、カセットコンロ用ガスボンベやスプレー缶などが複数混入していた。収集時に荷台の回転板などでそれらが押しつぶされ、残留していた可燃性ガスが荷台内に滞留し、着火した可能性

*2020/10/22発生の、神奈川・小学校で理科の実験中に体調不良

:アンモニア水をリトマス試験紙につけて色の変化を確認する実験中に起きた児童の体調不良。児童12名が病院に搬送されたが軽症。アンモニアの臭気を吸い込んだ可能性


ここ数週間、小中学校での理科の実験中の体調不良の事故が目立っています。

今年の春は、過去のこのRISCAD UpdateRISCAD CloseUPで取り上げてきた、中学校の理科の授業での、硫化鉄を使って発生した硫化水素の臭いを嗅いで確認する実験における、生徒たちの体調不良のニュースが聞かれませんでした。春先と季節を限定したのは、例年5月ごろにその実験授業が行われるようで、ここ数年は毎年その時期に体調不良のニュースが散見されたからです。

今年は何かにつけて新型コロナウイルスに関連する話となってしまうわけですが、これもまた然りです。

今年の春は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、学校が2ヶ月程度休校となったのです。ちょうどその頃が件の実験シーズンですので、必然的にその実験は行われませんでした。そのため実験での体調不良のニュースが聞かれなかったということと推測されます。

今月、岡山県の中学校で、理科の実験で発生させた硫化水素の臭いを嗅いだことによる体調不良が発生しました。
2020/10/02 岡山・中学校で硫化水素発生実験中に体調不良
中学校で硫化水素を発生させる理科の実験中に体調不良が起きた。理科室で実験をしていた生徒32名のうち、9名が体調不良となり、保健室で学校医の診察を受けたが軽症であった。生徒9名は同日中に授業に戻った。教育委員会の調べでは、試験管内で硫化鉄に塩酸を加えて硫化水素を発生させ、臭いを嗅いで確かめる実験中に、試験管を持っていた生徒の椅子を別の生徒が揺らしたため、試験管内の薬品がこぼれ、周囲で臭気を吸込んだ7名が実験後に頭痛やむかつきなどの体調不良となった。また、正しい臭いの嗅ぎ方の指示が伝わらなかった別の生徒2名が試験管に鼻を近づけて臭いを嗅ぎ体調不良となった。実験中は窓を開けて換気扇を作動させていた。
生徒の悪ふざけが原因かどうかは別として、前述の例年春先に発生する実験による体調不良も、おおよそ似たような内容です。

そして今週紹介した事例では、科目と原因物質は違えど、小学校で授業中に2件の児童の体調不良が起きています。これは対面での授業が再開され、実験や工作などの実践系の授業も開始されているからこそ起きた事故であるといえます。

大人でもストレスが溜まっているこのコロナ禍、成長過程にある子どもたちは、その未成熟な心の中に、大人では想像できないような不安を抱えているかもしれません。そのような不安が後押しして、体調不良の連鎖が起きる可能性もあり得ます。

授業前の安全確認と環境整備をしっかり行い、貴重な体験の機会である実践系の授業が不安につながることがないようにしてあげたいものです。

 

【さんぽのひろば 過去の参考記事】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子